理念経営とは何か
医療業界においては、医療の専門知識が多く求められる一方で、医療経営についての理解が不足していると感じる方も多いことでしょう。日々、多くの患者さんに対して医療サービスを提供する皆様にとって、経営についての知識は重要な要素となります。
そこで、ぜひこの機会に医療経営について考えてみていただきたいと思います。医療経営の一つの考え方として注目されるのが「理念経営」です。理念経営とは、あるべき理想を描き、その理想を共有できる仲間と協力して事業を行うことを指します。理念に共感する人々が集まり、共通の理念や目標を持ったチームを形成することが重要です。
理念経営の重要性とメリット
たとえば、患者さんに対して丁寧な説明をするという理念を掲げたクリニックを例に挙げましょう。採用時には、「当クリニックは患者さんに対して丁寧な対応を心掛けるクリニックです」と応募者に説明します。その際、応募者の反応は二つに分かれるでしょう。一方では「素晴らしい理念ですね。共感できます」と共感する反応がありますが、もう一方では「面倒くさいな」という思いを抱く人もいるかもしれません。
このような場合、理念に共感できる人材は当クリニックで働きたいと考えるでしょうが、面倒くささを感じる人材は他の選択肢を模索することでしょう。このように、理念経営においては、共感できる人材がクリニックに集まることが重要です。優れた人材獲得によりクリニックのパフォーマンスが向上し、双方にとって良い結果をもたらすのです。
また、理念経営の基盤には渋沢英一氏の「論語と算盤」という著作に込められた考え方があります。これによれば、利益を重視する経営は道徳的な側面を無視する傾向があり、コンプライアンスや倫理に欠ける行為が顕著になるでしょう。その結果、スタッフの信頼や協力が得られず、組織の成長が阻害されます。
一方、医療の本質や道徳を重視する理念に基づく経営では、スタッフが理念に共感し、組織全体で協力し合う姿勢を持ちます。このような環境下では、仕事に対するモチベーションが高まり、チームワークを発揮することができます。結果として、ソロバン的な利益も追求できるのです。
理念経営を実現するための考え方とは
将来的には、スタッフ自身が医療についての考え方を形成することが望まれます。開業時点では院長が理念を明確にし、医療に対する自身の考えを示すことが求められます。しかし、スタッフを雇用し、組織が安定し、患者数も増えてからは、スタッフ全員が理念を共有し、積極的に考えることが重要です。
このようなプロセスを通じて、組織全体がアップデートされ、みんなで作り上げたクリニックが実現することでしょう。それは、院長個人のクリニックではなく、全員が共有する理念に基づくクリニックの形成です。このような理想的な状態を目指して、理念経営を取り入れることは、皆さんのクリニックや医療チームにおいて非常に意義深いことであると考えます。
以上が、理念経営についての考え方に関する解説となります。皆様もぜひ、自身のクリニックや医療組織において、理念経営を検討してみてください。共有された理念を持つ仲間との協力により、組織の成長や良い結果を実現することができるでしょう。
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